From d2d2fed4e484b5c2caea652838becd884a8225d5 Mon Sep 17 00:00:00 2001 From: shigek Date: Fri, 28 Mar 2003 05:00:21 +0000 Subject: Copied from rough/bigdecimal,documents & some sample programs added. git-svn-id: http://svn.ruby-lang.org/repos/ruby/trunk@3625 b2dd03c8-39d4-4d8f-98ff-823fe69b080e --- ext/bigdecimal/bigdecimal_ja.html | 706 ++++++++++++++++++++++++++++++++++++++ 1 file changed, 706 insertions(+) create mode 100644 ext/bigdecimal/bigdecimal_ja.html (limited to 'ext/bigdecimal/bigdecimal_ja.html') diff --git a/ext/bigdecimal/bigdecimal_ja.html b/ext/bigdecimal/bigdecimal_ja.html new file mode 100644 index 000000000..bfddabd3b --- /dev/null +++ b/ext/bigdecimal/bigdecimal_ja.html @@ -0,0 +1,706 @@ + + + + + +BigDecimal:An extension library for Ruby + + +

BigDecimal(可変長浮動少数点演算用拡張ライブラリ)

+
English

+BigDecimal はオブジェクト指向の強力なスクリプト言語である Ruby に可変長浮動小数点 +計算機能を追加するための拡張ライブラリです。 +Ruby についての詳しい内容は以下のURLを参照してください。 + +
+

目次

+ + +
+ +

はじめに

+Ruby には Bignum というクラスがあり、数百桁の整数でも計算することができます。 +ただ、任意桁の浮動少数点演算用クラスが無いようです。そこで、 +任意桁の浮動少数点演算用拡張ライブラリ BigDecimal を作成しました。 +不具合や助言・提案がある場合どしどし、 +
shigeo@tinyforest.gr.jp +までお知らせください。不具合を直す気は大いにあります。ただ、時間などの関係で約束 +はできません。また、結果についても保証できるものではありません。 +予め、ご了承ください。 +

+このプログラムは、自由に配布・改変して構いません。ただし、著作権は放棄していません。 +配布・改変等の権利は Ruby のそれに準じます。詳しくは README を読んでください。 + +
+

インストールについて

+BigDecimal を含む Ruby の最新版はRuby公式ページからダウンロードできます。 +ダウンロードした最新版を解凍したら、通常のインストール手順を実行して下さい。 +Ruby が正しくインストールされれば、同時に BigDecimal も利用できるようになるはずです。 +ソースファイルは +bigdecimal.c,bigdecimal.h +の2個のみです。
+ +
+ +

使用方法とメソッドの一覧

+「Rubyは既に書ける」という前提で、

+ +
+require 'bigdecimal'
+a=BigDecimal::new("0.123456789123456789")
+b=BigDecimal::new("123456.78912345678",40)
+c=a+b
+
+
+
+というような感じで使用します。 + +

メソッド一覧

+以下のようなメソッドが利用可能です。
+記述上、BigDecimal オブジェクトを a,b,c,rで、String(文字列)オブジェクトを + s、整数を n で表記します。また、「有効桁数」とは BigDecimal が精度を保証する +桁数です。ぴったりではありません、若干の余裕を持って計算されます。また、 +例えば32ビットのシステムでは10進で4桁毎に計算します。従って、現状では、 +内部の「有効桁数」は4の倍数となっています。 + +
+後は、読んで字の如くです。
+ +

coerceについて

+BigDecimal オブジェクトが算術演算子の左にあるときは、BigDecimal オブジェクトが +右にあるオブジェクトを(必要なら) BigDecimal に変換してから計算します。 +従って、BigDecimal オブジェクト以外でも数値を意味するものなら右に置けば +演算は可能です。

+文字列で数値を与える場合は注意が必要です。数値に変換できない文字があると、 +単に変換を止めるだけでエラーにはなりません。"10XX"なら10、"XXXX"は0 +と扱われます。
+
+   a = BigDecimal.E(20)
+   c = a * "0.123456789123456789123456789" # 文字を BigDecimal に変換してから計算
+
+無限大や非数を表す文字として、"Infinity"、"+Infinity"、"-Infinity"、"NaN" +も使用できます(大文字・小文字を区別します)。ただし、mode メソッドで false を +指定した場合は例外が発生します。 +
+また、BigDecimalクラスは coerce(Ruby本参照)をサポートしています。 +従って、BigDecimal オブジェクトが右にある場合も大抵は大丈夫です。 +ただ、現在の Ruby インタプリタの仕様上、文字列が左にあると計算できません。
+
+  a = BigDecimal.E(20)
+  c = "0.123456789123456789123456789" * a # エラー
+
+必要性があるとは思いませんが、どうしてもと言う人は + String オブジェクトを継承した新たなクラスを作成してから、 +そのクラスで coerce をサポートしてください。 + +
+ +

無限、非数、ゼロの扱い

+「無限」とは表現できないくらい大きな数です。特別に扱うために + +Infinity(正の無限大)や -Infinity(負の無限大)という +ように表記されます。 +無限は 1.0/0.0 のようにゼロで割るような計算をしたときに生成されます。 +

+「非数」は 0.0/0.0 や Infinity-Infinity 等の結果が定義できない +計算をしたときに生成されます。非数は NaN(Not a Number)と表記されます。 +NaN を含む計算は全て NaN になります。また NaN は自分も含めて、どんな数 +とも一致しません。 +

+ゼロは +0.0 と -0.0 が存在します。ただし、+0.0==-0.0 は true です。 +

+Infinity、NaN、 +0.0 と -0.0 等を含んだ計算結果は組み合わせに +より複雑です。興味のある人は、以下のプログラムを実行して結果を +確認してください(結果について、疑問や間違いを発見された方は +お知らせ願います)。 + +
+
+require "bigdecimal"
+
+aa  = %w(1 -1 +0.0 -0.0 +Infinity -Infinity NaN)
+ba  = %w(1 -1 +0.0 -0.0 +Infinity -Infinity NaN)
+opa = %w(+ - * / <=> > >=  < == != <=)
+
+for a in aa
+  for b in ba
+    for op in opa
+      x = BigDecimal::new(a)
+      y = BigDecimal::new(b)
+      eval("ans= x #{op} y;print a,' ',op,' ',b,' ==> ',ans.to_s,\"\n\"")
+    end
+  end
+end
+
+
+ +
+
+

内部構造

+BigDecimal内部で浮動小数点は構造体(Real)で表現されます。 +そのうち仮数部は unsigned long の配列(以下の構造体要素frac)で管理されます。 +概念的には、以下のようになります。

+ <浮動小数点数> = 0.xxxxxxxxx*BASE**n

+ここで、xは仮数部を表す数字、BASEは基数(10進なら10)、nは指数部を表す +整数値です。BASEが大きいほど、大きな数値が表現できます。つまり、配列のサイズを +少なくできます。BASEは大きいほど都合がよいわけですが、デバッグのやりやすさなどを +考慮して、10000になっています(BASEはVpInit()関数で自動的に計算します)。 +これは、32ビット整数の場合です。64ビット整数の場合はもっと大きな値になります。 +残念ながら、64ビット整数でのテストはまだやっていません(もし、やられた方がいれば +結果を教えていただければありがたいです)。 +BASEが10000のときは、以下の仮数部の配列(frac)の各要素には最大で4桁の +数字が格納されます。

+浮動小数点構造体(Real)は以下のようになっています。 +
+
+  typedef struct {
+     unsigned long MaxPrec; // 最大精度(frac[]の配列サイズ)
+     unsigned long Prec;    // 精度(frac[]の使用サイズ)
+     short    sign;         // 以下のように符号等の状態を定義します。
+                            //  ==0 : NaN
+                            //    1 : +0
+                            //   -1 : -0
+                            //    2 : 正の値
+                            //   -2 : 負の値
+                            //    3 : +Infinity
+                            //   -3 : -Infinity
+     unsigned short flag;   // 各種の制御フラッグ
+     int      exponent;     // 指数部の値(仮数部*BASE**exponent)
+     unsigned long frac[1]; // 仮数部の配列(可変)
+  } Real;
+
+例えば 1234.56784321 という数字は(BASE=10000なら)
+
+    0.1234 5678 4321*(10000)**1
+
+ですから frac[0]=1234、frac[1]=5678、frac[2]=4321、 +Prec=3、sign=2、exponent=1 となります。MaxPrecは +Prec より大きければいくつでもかまいません。flag の +使用方法は実装に依存して内部で使用されます。 + +
+
+

2進と10進

+BigDecimal は <浮動小数点数> = 0.xxxxxxxxx*10**n という10進形式で数値を保持します。 +しかし、計算機の浮動小数点数の内部表現は、言うまでもなく <浮動小数点数> = 0.bbbbbbbb*2**n という +2進形式が普通です(x は 0 から 9 まで、b は 0 か 1 の数字)。 +BigDecimal がなぜ10進の内部表現形式を採用したのかを以下に説明します。 +

10進のメリット

+
+
デバッグのしやすさ +
まず、プログラム作成が楽です。frac[0]=1234、frac[1]=5678、frac[2]=4321、 +exponent=1、sign=2 なら数値が 1234.56784321 であるのは見れば直ぐに分かります。 + +
10進表記された数値なら確実に内部表現に変換できる +
例えば、以下のようなプログラムは全く誤差無しで +計算することができます。以下の例は、一行に一つの数値 +が書いてあるファイル file の合計数値を求めるものです。 +

+   file = File::open(....,"r")
+   s = BigDecimal::new("0")
+   while line = file.gets
+      s = s + line
+   end
+
+この例を2進数でやると誤差が入り込む可能性があります。 +例えば 0.1 を2進で表現すると 0.1 = b1*2**(-1)+b1*2**(-2)+b3*2**(-3)+b4*2**(-4).... +と無限に続いてしまいます(b1=0,b2=0,b3=0,b4=1...)。ここで bn(n=1,2,3,...) は +2進を表現する 0 か 1 の数字列です。従って、どこかで打ち切る必要があります。 +ここで変換誤差が入ります。もちろん、これを再度10進表記にして印刷するような +場合は適切な丸め操作(四捨五入)によって再び "0.1" と表示されます。しかし、 +内部では正確な 0.1 ではありません。 + +
有効桁数は有限である(つまり自動決定できる) +
0.1 を表現するための領域はたった一つの配列要素( frac[0]=1 )で済みます。 +配列要素の数は10進数値から自動的に決定できます。これは、可変長浮動小数点演算では +大事なことです。逆に 0.1 を2進表現したときには2進の有効桁をいくつにするのか 0.1 を +見ただけでは決定できません。 +
+ +

10進のデメリット

+実は今までのメリットは、そのままデメリットにもなります。 +そもそも、10進を2進、2進を10進に変換するような操作は変換誤差 +を伴う場合を回避することはできません。 +既に計算機内部に取り込まれた2進数値を BigDecimal の内部表現に +変換するときには誤差が避けられない場合があります。 + +

最初は何か?

+自分で計算するときにわざわざ2進数を使う人は極めてまれです。 +計算機にデータを入力するときもほとんどの場合、 +10進数で入力します。その結果、double 等の計算機内部 +表現は最初から誤差が入っている場合があります。 +BigDecimal はユーザ入力を誤差無しで取り込むことができます。 +デバッグがしやすいのと、データ読みこみ時に誤差が入らない +というのが実際のメリットです。 + +
+
+

計算精度について

+c = a op b という計算(op は + - * /)をしたときの動作は +以下のようになります。

+1.乗算と除算は(a の有効桁数)+(a の有効桁数)分の最大桁数(実際は、余裕を持って、 +もう少し大きくなります)を持つ変数 c を新たに生成します。 +加減算の場合は、誤差が出ないだけの精度を持つ c を生成します。例えば + c = 0.1+0.1*10**(-100) のような場合、c の精度は100桁以上の精度を +持つようになります。 +
+2.次に c = a op b の計算を実行します。

+このように、加減算と乗算での c は必ず「誤差が出ない」だけの精度を +持って生成されます。除算は(a の有効桁数)+(a の有効桁数)分の最大桁数 +を持つ c が生成されますが、c = 1.0/3.0 のような計算で明らかなように、 + c の最大精度を超えるところで計算が打ち切られる場合があります。

+いずれにせよ、c の最大精度は a や b より大きくなりますので c が必要とする +メモリー領域は大きくなることに注意して下さい。 +

+注意:「+,-,*,/」では結果の精度(有効桁数)を自分で指定できません。 +精度をコントロールしたい場合は、以下の add,sub 等のメソッド +を使用します。
+ +

自分で精度をコントロールしたい場合

+自分で精度(有効桁数)をコントロールしたい場合は assign、add、sub、mult、div 等のメソッド +が使用できます。 +以下の円周率を計算するプログラム例のように、 +求める桁数は自分で指定することができます。 +

+
+#!/usr/local/bin/ruby
+
+#
+# pai.rb
+#  USAGE: ruby pai.rb n
+#   where n is the number of digits required.
+#  EX.: ruby pai.rb 1000
+#
+
+require "bigdecimal"
+#
+# Calculates 3.1415.... using J. Machin's formula.
+#
+def pai(sig) # sig: Number of significant figures
+  exp    = -sig
+  pi     = BigDecimal::new("0")
+  two    = BigDecimal::new("2")
+  m25    = BigDecimal::new("-0.04")
+  m57121 = BigDecimal::new("-57121")
+
+  u = BigDecimal::new("1")
+  k = BigDecimal::new("1")
+  w = BigDecimal::new("1")
+  t = BigDecimal::new("-80")
+  while (u.exponent >= exp) 
+    t   = t*m25
+    u,r = t.div(k,sig)
+    pi  = pi + u
+    k   = k+two
+  end
+
+  u = BigDecimal::new("1")
+  k = BigDecimal::new("1")
+  w = BigDecimal::new("1")
+  t = BigDecimal::new("956")
+  while (u.exponent >= exp )
+    t,r = t.div(m57121,sig)
+    u,r = t.div(k,sig)
+    pi  = pi + u
+    k   = k+two
+  end
+  pi
+end
+
+if $0 == __FILE__
+  print "PAI("+ARGV[0]+"):\n"
+  p pai(ARGV[0].to_i)
+end
+
+
+
+ + +
+小林 茂雄 + +(E-Mail:<shigeo@tinyforest.gr.jp>) + + + + + + + -- cgit